未来のことを考えた事はあるだろうか。おそらくほとんどの小売業者はないのではないだろうか。というのも、今現在起こっていることに注意を払いすぎているからだ。日々のビジネス運営や利益の維持に気を取られすぎているといっても過言ではない。
上記のことが大事でないと言っているのではない。ただ言いたいのは、明日起こることの方がもっと重要であるということだ。
IoT、バーチャルリアリティー、それから小売業を再形成させる機会学習といった、時代を覆すようなテクノロジーによって、未来のことを考えなければならないのが当たり前となった。現在でも未来でも、ライバルとの競争に勝ちたいのであれば、このようなイノベーションを試行し始めなければ手遅れになるであろう。
没入的な顧客体験をクリエイトするということ
ニューヨーク・ブルックリン拠点のビール工場にいると想像してみよう。最高級のビールを作り出した今、ブルックリン中の人々が自分のビールに夢中になっているとする。さあ今、どうやってこのビールの広告をシアトルやサンフランシスコまで広げることができるだろうか?
バーチャルリアリティやIoTによってより没入的な顧客体験を作り出すことができる。自分のビール工場に関しての詳細を国中の人々に提供することができ、自らのビールを試飲してもらえることにつながるのだ。
360度のビデオカメラでバーチャルリアリティの機能を活用することで、世界中の人々に工場ツアーを体験してもらえるし、試飲室への案内、アウトドアのバルコニー、ビールの生産過程を見てもらうことだってできる。
IoTのセンサーによって見込み客に生産過程の詳細を提供することもでき、またホップを煮る段階から発酵が完了するまでの工程のリアルタイムのデータを共有することだってできる。
もしその場で自分のビールを気に入ってもらえたら、オンラインで発注することも可能だ。
没入的顧客体験、つまり自社がどのようにビジネス運営を行い、どのようにして商品が生産されるのかを見てもらえることは、小売業者にとって成功間違いなしの秘訣である。
ファッションへの情熱:トレンドの察知
インスタグラムと言えば画像を共有できる非常に人気のあるアプリだが、世界に8億人のユーザーが存在し、1日に9500万もの写真や動画が投稿されている。
もし、ある女性がアメリカから東京に旅行することを計画しており、その間ファッションにも気を付けようと心掛けるとしたら、何を参考にするだろうか?
もちろん、インスタグラムである。
“fashon”や“Tokyo”というキーワードを打ち込めば、今流行のトレンドを一目散で見ることができ、東京の人々がどんな格好をしているのかというアイデアを得られ、出発前にそれに見合ったファッションを購入し、実際東京にいるときに場違いな雰囲気を感じることなく旅行することができる。
小売業者、特にファッション業界における小売業者は、消費者たちがインスタグラムのようなアプリケーションを使用することによって利益を得ることができる。ロンドンやパリ、東京、ミラノ、またはニューヨークのようなファッションのメッカで撮られる写真を分析すれば、正確に現状を把握することができるのだ。
その分析と機械学習をマッチさせることで、小売業者はファッションのトレンドを感知し予測することだってできる。そうすればデザイナーたちは今の流行、また今後流行るであろうトレンドに沿って仕立てることが可能だ。
花柄のミニスカートを着ているのであれば、それに見合うレギンスをデザインする。デニムで着飾っているのであれば、ジーンズジャケットの生産を促す。
最新のトレンドに敏感であることで自身の小売業者が先導に立つことができる。機会学習によってファッション業界で次に流行しそうなものを予測することは、つまり競合他社へ自社の勝利を宣告するようなものなのだ。
コネクションを増加と顧客の利便性の向上
コネクテッドプロダクトが今我々の生活を侵食している。リビングには多機能テレビが置かれ、お風呂にはBluetooth搭載のシャワーがあり、寝室には睡眠時間によって点消灯するライトがある。
キッチンにあるものもだんだんと“スマート化”してきている。夕食の準備ができたと知らせる調理器からスマートフォンで操作ができるコーヒーマシーンまで、消費者にとっての利便性は格段とあがっている。
冷蔵庫に関しては、ドアについている画面で買い物リストを作成することができる。IoTによってモバイル機器でそのリストの変更をすることだって可能だ。その冷蔵庫でクリック&コレクト機能を使い、近くのスーパーに注文をすることもできる。
拡張現実(オーグメンテッド・リアリティ)によって、冷蔵庫を開けなくても中に何があるかを確かめることができる。例えば職場にいる時に、明日の朝食の牛乳が残っているかどうか調べたいのであれば、タブレットやスマートフォンで確認することができるのだ。
小売業者や消費財会社は商品体験をより充実させるためにこのテクノロジーを活用することができる。例えばバターのパッケージであれば、スマートフォンを使って冷蔵庫を覗き込んだ時、パッケージ上のコードを打ち込むことで、バターの賞味期限を確認することができたり、またバターを使った何か新しいレシピを調べることができる、といったものだ。
面倒のない購入体験を作り出し、いかに消費者が商品を理解できるかという手段を高めることで、売り上げを伸ばし消費者からのロイヤルティーを勝ち取ることができるであろう。
小売業の近代化と在宅購入の革命
過去25年のうちにいかに不動産事業が変わってきたかを考えてみる。90年代前半、在宅購入の見込み客は不動産業者に予約を取ったり、オープンハウスに伺わなければならなかった。
2000年代半ば、在宅探しはTruliaやZillowなどのウェブサイトがスタートし、オンラインの世界を見ることとなる。今日、在宅購入者たちはアプリケーションで気に入った住宅の写真を撮り、価格を知り、敷地面積を知り、部屋数がいくつかを知ることすらできる。
不動産業者がそうしたように、小売業者も業界自体を近大化させるべきである。バーコードのスキャンやセンサー追跡こそその手助けとなるテクノロジーだ。
例えば自身の店舗で顧客にTシャツの値札をモバイル機器でスキャンしてもらうと、その服を駆使したファッションのアイデアやそれに見合ったアクセサリーを紹介することができたり、一方で、センサーを使って顧客が今店舗内のどこにいるのかを知り、その位置を基に小売業者がタイムリーにその顧客へ関連性のある商品のオファーを送ることができるだろう。
顧客体験に価値を与えることは小売業において最重要点である。最新のテクノロジーを駆使して店舗内での顧客体験にさらなる価値を作り出すことがベストな方法であると言えよう。
イノベーションの実証-革新的テクノロジーによる明るい未来
IoT、バーチャルリアリティ、そして機械学習。これらは小売業の未来を変えるイノベーションである。
昨今そして将来の自身のビジネスの成功には、これらのテクノロジーをいかに取り入れて顧客満足を図ろうと実証しようとする、その意志こそが重要なのである。